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  • 《2024年4月に施行予定の主な法令》

    2024年03月28日 2024年03月28日

    24年度も様々な法改正が予定されているため、内容を整理し、準備についても見直しておきましょう。

    ■ 改善基準告示改正(24年4月1日施行)

    22年に改正された、トラックやバス、タクシー・ハイヤーのドライバーの労働時間に関する基準である、「自動車の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)が、24年4月1日より施行されます。                                   これにより、1日の休息時間もしくは日勤1日の休息期間を、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないようにしなければなりません。他にも1年の拘束時間や1カ月の拘束時間が、それぞれの運転手別に短縮されています。私たちの生活を支える重要な役割を担っている自動車運転者は、長時間労働になることが多く、度重なる長時間労働で蓄積した疲労が原因で健康を損なうことや、それによる予期せぬ災害を引き起こすようなことを未然に防ぎたいとしています。           

    ■ 労働条件明示のルールの見直し(24年4月1日施行)

    労働基準法施行規則改正により、労働者を雇い入れる際に交付する「労働条件通知書」に、次の事項の記載が義務付けられます。

    ~ 全ての労働者に対する明示事項 ~

    ①就業場所及び従事すべき業務の変更の範囲(有期契約労働者に対する明示事項等)

    ②更新上限の有無及び内容

    ③「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに無期転換を申し込むことができる旨

    ④「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件

    ■ 化学物質管理者の選任について 

    24年4月1日より、リスクアセスメント対象物質を製造・取り扱い・譲渡提供する事業者は、「化学物質管理者の選任」が義務付けられます。リスクアセスメント対象物質とは、それの使用による労働者の健康被害を低減することが法令により義務付けられている化学物質のことで、化学物質管理に関わる業務を適切に実施できる能力を有する者から選任します。

  • ~労働条件明示のルールが変わります~

    2024年02月27日 2024年02月27日

    ■新たな明示事項の追加

    24年4月より、労働条件明示の制度(労働基準法施行規則第5条)が改正され、新たな明示事項が追加されることとなっています。

    全ての労働者を対象とする明示事項と、有期契約労働者に対する明示事項があり、4月以降は、それぞれ労働契約の締結時や更新時に、明示が必要となります。

    ■全ての労働者に対する明示事項について■

    《就業場所・業務の変更の範囲の明示》

     全ての労働契約の「締結」と、有期労働契約の「更新のタイミングごと」に、雇入れ直後の就業場所・業務の内容に加えて、これらの「変更の範囲」についても明示が必要です。

     この「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指しています。業務内容が限定されていない労働者については、予見可能性を示すことが求められるようになっています。

    ■有期契約労働者に対する明示事項等■

    《更新上限の明示》

    有期労働契約の締結と更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。

    最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合や、最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合は、その理由を有期契約労働者にあらかじめ説明することが必要です。(更新上限を新設・短縮する場合)

    《無期転換申込機会の明示》

    無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨の明示が必要となります。

    《無期転換後の労働条件の明示》

    「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示が必要となります。

    初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、更新のたびに明示が必要となります。

     また、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するにあたり、正社員等とのバランスを考慮した事項(業務内容や責任の程度など)の説明に努めることとしています。

    ■労働条件の明示方法

    昇給に関する事項を除く「絶対的明示事項の明示方法」については書面による交付が原則となりますが、労働者が希望した場合はFAXや電子メール(出力できる場合に限る)等で代替することも可能。

  • ■定年後の再雇用者の賃金、最高裁判決■

    2023年10月25日 2023年10月25日

    《高裁へ差し戻しに》

     本件は、定年退職後再雇用された嘱託社員(X)が、嘱託社員と正社員の基本給及び賞与に関する待遇差は労働契約法20条に違反すると最高裁まで争われている事件です。

     Xが、再雇用されたY社には、正社員と別に嘱託社員の就業規則があり、期間1年間の有期労働契約で、これを更新することで原則として65歳まで再雇用できる等としています。また、賃金体系については、勤務形態によりその都度決め、本人の経歴や年齢、その他の実態を考慮して決め、正社員定年退職時に比べ減額して支給することとしていました。賞与については、原則的に支給しないが、例外的に勤務成績を勘案して嘱託職員一時金として支給されていました。職務内容については、Xは嘱託社員となって以降も従前と変わらない勤務を続けており、責任の程度も相違ないものでした。

     争点となったのは、基本給、皆精勤手当などが、労働契約法20条に違反したかでした。1審2審では、職務内容、職責ともに定年前と変わらないのに、基本給が、4割~5割ほどに減額されていることなどから、労働者の生活保障の観点からも看過しがたく、正社員時の6割を下回る部分は違法であるとしました。

     一方、最高裁では、基本給、賞与に対してその性質などを明らかにする必要があることを、次のように指摘しています。

     基本給について、管理職以外の正社員のうち所定の資格の取得から1年以上勤務した者の基本給の額について、勤続年数による差異が大きいとまではいえないことからすると、正職員の基本給には職務給としての性質も含まれているとみる余地があるほか、職能給としての性質も含まれていないとはいえない。

     これに対し嘱託社員の場合、役職に就くことなどは想定されておらず、異なる基準のもとで支給されていることからも正社員の基本給とは性質が異なるものとみるべきである。

     原審ではその性質や支給の目的を何ら検討しておらず、労使交渉に関する事情を適切に考慮しないまま20条違反に当たるとした判断についても、同条の解釈適用を誤っているとし差し戻して、それぞれの性質、目的を十分に検討する必要があるとしました。

  • ■働き方見直しで、労働時間にも変化■

    2023年10月25日 2023年10月25日

    《若手は短縮傾向》

     働き方改革以降、長時間労働そのものは是正されつつありますが、世代によってその度合いには差がみられるようです。

     22年の労働力調査で男性の就業時間をみてみると、25歳~34歳は年2120時間で、45歳~54歳より3.7%短くなっています。13年のデータと比べた就業時間の減少率は、25歳~34歳で8.6%、45歳~54歳では5.7%となっており、上の世代ほど役職についていたり是正以前の働き方から脱しきれず、労働時間が長くなる傾向にあるとみられています。

     また、若い世代も役職についていないからというよりは、あえて残業を控え自分のための時間を持つことに価値を感じているように見受けられることも特徴となっています。しかし、日本の企業は労働時間を減らす一方、効率よく魅力的なサービスをつくり、付加価値を上げることがおろそかになっているとの指摘もあるように、日本の働き方改革は世界的にみれば未だ途上にあるといえ、労働生産性を上げるためにも、短時間で効率よく仕事をするための経営管理を、より意識していく必要があるとしています。

    《スポットワーカー、需要高まる》

     好きな時間・場所・職種を選び、仲介業者などを通じてお互いの条件が合えば、短時間、短期間だけ働き、継続した雇用関係のない働き方を「スポットワーク」といい、そのような働き方をする人を「スポットワーカー」と呼ぶそうです。

     柔軟な働き方を求める人からの需要が高く、企業の副業解禁の流れも追い風となり、主に人手不足が深刻である外食や小売業などの分野での活用が増えているそうです。ある仲介業者では、外食産業とのマッチングを行い働くことが決まると、勤務を開始する前に仕事内容や要領を動画で学び、メニューについてもおすすめするために定番を試食し、料理の特徴をまとめたカンペも用意することで、短時間などであっても即戦力となれるようなサポートがあるそうです。

     仲介業者を通すことで人件費はかさむものの、双方にメリットが大きく利用者も拡大していますが、一方で就労環境の未整備が課題となっており、その対応も求められています。

  • ■役職手当と残業代■

    2023年07月31日 2023年07月31日

    《固定残業代は就業規則などで明示を》

     5月下旬、会社が支給していた役職手当が残業代に当たるかどうかが争点とされた裁判の、地裁判決が出ています。

     この事件は、Y社の記者として従事していた40代の男性Xが、17年1月から21年7月の残業代(時間外労働の割増賃金)が未払いであるとし、その支払いを求めたもので、Y社はXに支給していた役職手当がその時間外労働分の賃金に当たると主張していました。判決ではY社の給与規定に役職手当と時間外手当が異なる性質のものとして取り扱われていることが指摘され、残業代には当たらないと判断、時効で請求権の消失した期間を除いた分の未払い残業代、約90万円の支払いが命じられました。役職手当に残業代が含まれているかどうかは、争われやすい問題です。労働者が労基法上の管理監督者である場合、会社は残業代を支給する義務を負いません。

     管理監督署とは、労働条件やその他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者のことで、労務管理上の決定権限を持っていることや、労働時間の裁量、それに見合った待遇を受けている者がこれにあたり、労働時間等の労基法の規定が適用されないため、時間外残業代と休日残業代は支払われません。管理監督者かどうかは、職務の内容や権限の有無などが「実態」により判断されるため、部長や課長等の名称の役職にあっても権限がない「名ばかり管理職」である場合は「労働者」であり、残業代の支払い対象となります。

     また、役職手当が固定残業代に該当する場合は、役職手当から残業代が控除されます。固定残業代は、時間外労働の時間数に応じた残業代を支払う代わりに、毎月固定額の残業代を給与に含めて支給するものです。役職手当が固定残業代に該当するとするには、労使の合意のもと、固定残業代を抜いた基本給の額、固定残業時間と固定残業代、その算出方法を明確にした上で、役職手当を残業代相当額として支給していることを就業規則や賃金規程に明記しておかなければなりません。また、固定残時間として取り決めた時間を超過した場合は、割増賃金を追加で支払う必要があります。

  • ■適用範囲の拡大検討へ■

    2023年07月31日 2023年07月31日

    《セーフティネット強化し少子化対策も》

     政府は、28年度までにパートやアルバイトなど、週の所定労働時間が20時間未満の労働者について、雇用保険の適用を拡大する方針を示しています。現在は、週の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがある場合が、加入の対象となっていますが、非正規の立場で働く人にも失業給付や育児休業給付を受け取ることができる環境を整え、少子化対策とともに進めたい考えです。

     仮に、週の所定労働時間を15時間以上とした場合、新たに対象となる労働者は約300万人、10時間以上とした場合では約500万人増えることが見込まれています。25年度中までには制度の概要を固め、企業には3年程度の猶予を以って適用体制を整えられるよう、まずは雇用保険法の改正に着手、周知と準備を進めるとしています。

     一方、雇用保険の適用拡大により、人件費の増加など企業の負担は増え、雇用調整も視野に業務の見直しも迫られることとなり、使用者側からの反発は避けられない状況です。従業員数の少ない企業ほど短時間労働者の割合も高く、保険料の負担増による好ましくない影響も懸念されるところとなっています。

     しかし、30年代に入ると日本の若年人口は現在の倍の速さで急速減少するとの試算からも、子育てしやすい環境整備のためにも負担増は避けられないとみられています。

    《学び直しが条件に》

     失業給付や休業手当の仕組みが見直され、政府の指針がまとめられています。失業給付については、これまで自己都合による離職である場合、受給資格決定日から2カ月間の給付制限期間後に受けられるとしていましたが、失業給付の申請前1年以内にリスキリングに取り組んでいた場合、会社都合の離職と同様に、7日間の待機期間満了後から受けられるようになります。

    また、雇用調整助成金についても、雇用調整が30日を超える場合は教育訓練を原則実施するなど見直しがされており、今後の日本経済の成長のためにも、「労働者が自分の意思で学び直し、職務を選択できる制度」へ移行していきたいとしています。

  • ■労務トピックス■

    2023年06月29日 2023年06月29日

    【次元の異なる少子化対策】

     昨年の出生数が80万人を割り込み、少子化問題はいよいよ待ったなしの状態です。

    政府は、30年代に入る前のこれからが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスであるとし、24年度からの3年間を集中取り組み期間として「こども・子育て支援加速化プラン」を実施する方針です。

     6月に示される骨太の方針(経済財政運営の改革と基本方針)に大枠を提示するとしていますが、「こどもまんなか」をテーマに、社会全体でこども・子育てを応援していくための意識改革をしていきたいとしています。

     たたき台としては「年収の壁(106万円/130万円)」の見直しをはじめ、児童手当の所得制限の撤廃や出産等の経済負担の軽減のほか、育児休業給付金の給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から80%程度(手取りで10割)に引き上げること、また、周囲の社員への応援手当てなど育休を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置を、大幅に強化することなどが挙げられています。

    【歯科医師による健康診断について】

     事業者には、労働者の健康を確保するため健康診断の実施が義務付けられていますが、一般健康診断や特殊健康診断以外に、「歯科医師による健康診断」が義務付けられている業務があります。

    「塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄りん、その他歯またはその支持組織に有害なもののガス、蒸気または粉じんを発散する場所における業務である有害業務」に常時従事する労働者に対しては、歯科医師による健康診断の実施が必要です。

     この健康診断は、雇入れ時、配置換えの際と6カ月以内ごとに1回実施することになっており、さらに22年10月以降は、常時使用する労働者の数にかかわらず、全ての事業場に結果報告が義務付けられています。

     この場合の健診は、虫歯や歯周病などの管理(検診)ではなく、化学物質による健康への影響(歯が溶けるなど)の観点から行うものですが、健康な身体を維持するためにも「歯の健康」がとても重要であることがわかってきており、歯の健康状態を確認する「国民皆歯科健診」の導入も検討されています。

  • ■特定技能等見直しへ■

    2023年06月28日 2023年06月28日

    外国人が能力を発揮できる社会へ

    現在、日本で就労が認められている在留資格は18種類ありますが、一般の事務所での雇用ケースとしては、技術(コンピューター技師、自動車設計技師等)、人文知識・国際業務(通訳、語学指導、為替ディーラー、デザイナー等)企業内転勤(企業が海外の本店または支店から期間を定めて受け入れる社員のこと)、技能(中華料理、フランス料理のコック等)の4種類が多いと考えられています。

     今回見直しが検討されているのは、人手不足対策として導入された「特定技能」です。24年5月で制度の導入から5年を迎えますが、熟練外国人労働者として家族の帯同や永住が認められている2号資格者が現在10人しかいないこと、初期から従事している1号労働者が来年就労期限を迎えることで生じる労働力不足を防ぐためにも、受け入れ分野を拡大し、労働力を確保したいとしています。

     さらに、導入から30年となる外国人技能実習制度についても、目的と実態が乖離していることや賃金問題、転籍条件問題などが指摘されており、廃止し新しい制度とする方向で検討が進められています。

     外国人を日本国内の労働者として受け入れていくことについては、労働力の確保として必須であると考える一方で、日本人の雇用を奪うのではないか、移民政策と変わらないのではないかなど、すんなり受け入れることは難しいとする考え方があります。

     しかし、現段階では外国人の受け入れは不可避であり、日本人に対するように外国人に対しても、長く安定して働ける環境を整えていかなければ雇用の確保も難しい状況です。

     検討されている特定技能2号の職種の拡大が実行されれば、1号からの移行者などが増えることが期待でき、2号となれば配偶者や子どもの帯同が認められ、さらに要件を満たすことで永住資格を得ることも可能となるため、長く安定して就労することにもつなげられるとし、来年の5月には間に合わせたいとしています。

     また、制度を刷新すると同時に、担い手が集まりにくい職種の待遇改善なども一企業で行うには限界があるため、政府の重要な政策として進めていくことが求められています。

  • ◆円満な復職を考える

    2023年05月25日 2023年05月25日

    《 復職可否について引用される判例 》

    これは、私傷病により休職した従業員が復職するまでの間の賃金と減額された一時金について、最高裁まで争われた事件です。(片山組事件 結審98年4月9日)

     本件の従業員Xは、建設総合業であるY社において、入社以来21年以上にわたり、建設工事現場の現場監督業務に従事していました。

     バセドウ病に罹り通院治療を続けながら現場業に従事していましたが、Y社より次の現場の監督となるよう業務命令が発令された際、Xは次の現場では同様の作業ができないことを伝え診断書を提出したところ、Y社は、Xの健康面や安全面で問題が生じる恐れがあるため業務に従事することは不可能であると判断し、自宅での治療を命じました。

     Xはデスクワーク程度の労働が適切であるとした診断書を再提出し、実際に従事したこともある事務作業への配転を求めましたが、Y社は自宅治療の命令を継続しました。

     約4カ月後、Xの症状は仕事に支障がなくなり現場監督として復職しましたが、他業務なら休職せず勤務を継続できたためこの命令は無効であったとし、復職までの欠勤(無給)扱い期間分の給与と、減額された一時金の支払いを求め争われることとなりました。

     裁判では「従業員が職種や業務内容を特定しないで労働契約を締結した場合は、現に就業を命じられた特定の業務を完全には遂行できないとしても、その従業員の能力、経験、地位、会社の規模、業種、配置・異動の実情や難易等に照らして、その者が配置される可能性がある他の業務を遂行できる現実的可能性が認められ、かつ、本人もそれを申し出ているのであれば、労務の提供があるとするのが相当である。」とし、欠勤扱いはできず賃金の支払い義務はあったと判断されており、その後の、労働者が職種や地域が限定されていない労働契約の場合の、復職可否に関するケースでの判断基準として引用されています。

     近年ではメンタルヘルスの不調なども増加し、従前の業務に復職することが難しいケースも増えており、主治医、本人、会社と双方で情報を共有することをはじめ、配転の可能性や、復職できる健康状態などを就業規則に示しておくことも必要と考えられています。

  • 事業所外労働の把握

    2023年04月20日 2023年04月20日

    《管理監督者性などを争点とした事案》

     本件は、現場で作業を行う常駐システムエンジニアである元従業員XがY社に対し、労働契約に基づき未払い割増賃金等の支払いなどを求めたもので、Y社もXに対し過払い賃金の返還や不当な賃上げ要求により被った損害賠償金の支払いなどを求め反訴しました。

     主な争点となったのは、Xの管理監督者性、事業場外みなし労働時間制(以下「みなし制」)、固定残業代についてです。

     Xの管理監督者性について、裁判ではXには部下がおらず、労働時間についても基本的に現場の勤務時間に従うこととされ定時で勤務していたことはXが毎月提出していた作業実績報告書からも認められるとし、また、給与額からみても最大40万円であり、厳格な労働時間等の規制をしなくてもその保護に欠けるところはないといえるほど待遇面で優遇措置を講じられていたと評価することはできないとし否定されました。

     みなし制については、Xの勤務場所は当該客先、勤務時間は現場の勤務時間に従うこととされ明確であり、業務内容も一定の定型性を有していることから、Y社において事前にある程度勤務状況や業務内容を把握することができたということができ、Xは常に携帯電話を所持しY社と連絡のつく状態でいるよう指示されており、この指示により別の現場に移動するなどしていたことからも、勤務状況等を具体的に把握することができたといえ、作業実績報告書にも毎日の労働時間について記録していたことからも、Y社においてXの勤務の状況を具体的に把握することが困難であったということはできず、「労働時間を算定し難い時に当たる」とは言えないとしました。

     固定残業代(プロジェクト手当)については、Y社の就業規則により、みなし制の対象者に支給するものとしていますが時間外労働に対する対価である旨の規定はなく、みなし時間が所定労働時間働いたとみなす制度であることからすれば、当該手当は時間外労働に対する対価として支払われるものではないとみるのが自然であり、仮に時間外労働に対する対価としての性質を有するとしても通常の労働時間の賃金に当たる部分との判別はできず該当制を否定し、Y社の訴えを退けました。

    ※事業場外労働時間みなし労働時間制とは

    労働基準法38条の2第1項では、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは所定労働時間労働したものとみなすとしています。

  • 時間外割増は50%に

    2023年04月20日 2023年04月20日

    《2023年4月1日より施行》

     時間外労働に対する賃金について労働基準法では、「使用者が労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」としています。また、「ただし、当該延長して労働させた時間が1カ月について時間外労働が60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」となっている部分については、労働現場の実績などから中小企業に関しては適用が見送られていました。

     しかし、この春の労働基準法の改正によって、23年4月1日以降は企業規模の大小に関わらず、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は一律50%に引き上げられることとなりました。

     ここでいう残業時間(時間外労働)とは、法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)を超える労働時間のことで、1カ月の起算日からの時間外労働数を累計して60時間を超えた時点から50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

    ◆深夜労働との関係

     月60時間を超える時間外労働を深夜(22時から5時)の時間帯に行わせる場合

     →深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%

    ◆休日労働との関係

     月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれる。

    ※法定休日労働の割増賃金率は35%です。

    ◆代替休暇

     月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため引き上げ分の割増賃金の支払いの代わりに有休の休暇(代替休暇)を付与することができます。

     改正に伴う必要な就業規則の見直しを行うとともに、時間外労働の発生しにくい職場づくりを目指していただきたいと思います。

  • 少額投資非課税制度 NISA拡充へ

    2023年03月16日 2023年03月16日

    ◆自助への後押し進む

     昨年末に23年度の与党税制改正大綱が策定され、少額投資非課税制度(NISA)について、24年以降は口座開設期間を恒久化するなど時限的であった制度が拡充されることとなりました。

     国はNISAや個人型確定拠出年金(iDeCo)などの制度により、人生100年時代といわれる中で自助努力に基づく資産形成の支援、促進を図るための取り組みを進めています。NISAでは、通常、株や投資信託などの金融商品に投資した場合、これらを売却して得た利益や配当金に対して約20%の税金がかかるところ、NISA口座内で毎年一定金額の範囲内で購入した、これらの金融商品から得られる利益が非課税となります。

     一方のiDeCoは私的年金制度であり、受け取り年齢に達するまで払い出しに制限がかかりますが、掛け金が全額所得控除、運用益も非課税で再投資、受け取る時も控除があり、制度の内容は異なりますが、どちらも投資運用により資産を増やすというものです。

     NISAの現行制度は、20歳以上を対象とした14年から始まった一般型(年間非課税枠120万年)と18年から始まった、つみたて型(同40万円)、20歳未満を対象としたジュニアNISA(同80万円)からなっていますが、24年以降は、ジュニアNISAは終了し、他の2つも「つみたて投資枠」(年間投資枠120万円)、「成長投資枠」(同240万円)となり対象年齢は18歳以上となります。 ※現行制度も23年1月以降は18歳以上利用可能となっています。

     また、一般型で5年間、つみたて型では20年間となっていた非課税保有期間は新制度では無期限化、口座開設期間も恒久化され、これら新制度は現行制度とは別枠で管理されるため、23年末までに投資した商品は現行制度における非課税措置を適用するとしていますが、現行制度から新制度への移管(ロールオーバー)は不可としています。

     福利厚生の一環として、つみたてNISA制度などを活用している企業も増えつつありますが、新旧両制度が並行すること等も予測されるため社内での取り扱いをどのようにしていくのか早めに整理しておく必要があります。

    23年度の年金支給額、引き上げへ

    ◆マクロスライド発動

     22年の平均全国消費者物価指数(総務省)が公表されたことを受け、厚労省より23年度の年金額改定が公表されました。

     年金支給額は賃金や物価の変動に応じて調整されますが、名目手取り賃金変動率が物価変動率を上回る場合、67歳以下である新規裁定者の年金額は名目手取り賃金変動率を、68歳以上である既裁定者の年金額は物価変動率を用いて改定すると定められています。

     このため、23年度の年金額は、新規裁定者(67歳以下の方)は名目手取り賃金変動率2.8%を、既裁定者(68歳以上の方)は物価変動率2.5%を用います。

     また23年度のマクロ経済スライドによる調整(▲0.3%)と、前年度までのマクロ経済スライド未調整分(▲0.3%)による調整も加わるため、23年度の年金額は、新規裁定者は前年度より2.2%引き上げ、既裁定者は前年度より1.9%引き上げることになります。

     改定により年金は2.2%(既裁定者は1.9%)増額されることになりましたが、物価の上昇率は2.5%であり物価の上昇に追いついておらず、高齢者の負担感が強まってしまうことが景気の足かせとなることが心配されています。

     マクロ経済スライドは、将来の現役世代の負担が過重なものにならないように導入されたものですが、今後も賃金、物価は上昇していくと考えられる中で、いかにして給付の水準を保ちながら制度を維持していくのか、その舵取りは非常に難しいものとなっています。

             令和5年度の新規裁定者(67歳以下の方)の年金額の例

      
      令和4年度(月額)
      令和5年度(月額)
        
         国民年金※1
     (老齢基礎年金満額:1人分)
        64,816円    66,250円
       (+1,434円)
       
         厚生年金※2
     (夫婦2人分の老齢基礎年金を
      含む標準的な年金額)
        219,593円    224,482円
       (+4,889円)

    ※1 令和5年度の既裁定者(68歳以上の方)の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額66,050円(対前年度比+1,234円)です。

    ※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与を含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

  • 降格減給の実施権限とその濫用

    2023年02月16日 2023年01月30日

    ◆連続減額の合理性◆

    これは人事考課により4年連続減給となったことに対し、減給は無効であり、その差額賃金や慰謝料の支払いを求めた事件です。

    ネットワークエンジニアとして従事していたXは、11年10月、勤めていた会社がY社に吸収合併されることになり、あらためてY社と正社員として雇用契約を締結しました。

    15年度、Y社は従業員に対し、年1回行う行動評価の結果により賃金グレードを決定すること、報酬テーブルとして84の賃金グレードを定めることなどを示した人事・報酬制度ガイドブックを周知しました。この人事考課導入後、Xは減給評価となり、 30万2390円から27万6730円に、以降4年連続ダウン評価となり、4年後には賃金額が21万2090円と当初賃金より約30%の減額となったことで、この評価による賃金の減額は違法であり無効であるとして提訴しました。

    裁判では、Y社により定められている規定からも賃金を減額する根拠規定があり、本件評価にあたり考課裁量を逸脱又は濫用したとは認められず、いずれの行動評価についても本件降給基準を充足しており、Y社がXに対して賃金減額を検討して実施する権限があったと認めました。しかしY社の就業規則・給与規定には具体的なグレード毎の賃金の定めがなく、ガイドブックにおいてもグレード毎の定義(役職・職務内容・責任等)は規定されていないことから、権限があり減額され得ることが労働契約上予定されていたと認められるとしても、Y社の権限行使による減額内容等によっては、なお減額幅決定権限の濫用により賃金減額の効力が否定されると解すべきとしました。

    そして、本件賃金減額は、通常の労働に対する対価としての賃金を継続的に一定額減給するものとしている上、本件降給基準を充足して賃金グレードが下げられたからといってそれに伴う労働契約上の職責や職務内容の変更も伴わず、1回の減給幅が10%以内であっても繰り返されることで膨らむXの不利益に対する手当等も認められず、Xの不利益の大きさと対比して連続減額の客観性及び合理性の乏しさは否定し難いとし、当初の賃金より10%を超える減額部分を無効としました。

    ”減給の制裁について(労働基準法第91条 制裁規定の制限)”

    就業規則で労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

    介護保険制度とは

    介護保険とは、高齢化が進むにつれ、介護を必要とする高齢者の増加や核家族化の進行、介護による離職が社会問題となり、こうした中、家族の負担を軽減し介護を社会全体で支えることを目的に、2000年に創設された比較的新しい保険制度です。

    40歳を迎えた月より加入し、介護保険料を納めることとなりますが、国民健康保険などの公的医療保険とは異なりいつでも利用できるわけではなく、介護が必要であると認定された場合に初めて利用できるのもこの制度の特徴です。

    《介護保険の被保険者》

    介護保険の被保険者は、65歳以上の方(第1号被保険者)と、40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)に分けられます。

    第1号被保険者は、原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。保険料は一般的には年金からの天引きで支払われますが、公的年金が年間18万円に満たない場合はご自身で手続きをし支払い、「保険料基準額」に「前年の所得に応じて区分けされた係数」(市区町村ごとに区分けや係数は異なる)をかけたものになります。

    第2号被保険者は、加齢が原因の疾病のうち、16種類の特定疾病で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。保険料は健康保険や共済組合等の保険料に上乗せされ支払うことになりますが、勤務先との労使折半となるため、加入している健康保険や共済組合によって保険料の計算方法は変わります。

    会社の健康保険に加入している方は標準報酬月額、自営業などで国民健康保険に加入している方は前年の所得に応じて保険料が決まります。

    《要介護認定とは》

    要介護認定は「要支援1~2」「要介護1~5」の7段階に区分されています。

    日常生活に必要な動作を自分で行うことができる状態を「要支援」、日常生活に必要な動作が困難な状態を「要介護」とし、「要支援1」から数字が大きくなるほど介護が必要な状態になり、「要介護5」が最も介護が必要な状態となります。

  • 母性健康管理に対する企業の義務

    2023年02月16日 2022年11月30日

    《安心できる環境整備を》

     出産というのは家族にとっての一大イベントであるのはもちろんですが、母体にとっても肉体的、精神的に大きな変化が起き、特に出産後は女性のライフサイクルにおいて最も精神疾患が発症しやすい時期ともいわれることもあり、妊娠中又は出産後の女性労働者の母性を守るため、企業も適切な対応をとらなくてはなりません。(母性健康管理)

     妊娠した際には、母体や子どもの健康確保のために定期的に健康診査等を受ける必要がありますが、これらに対応する措置は、就業規則等に記載されていなくても事業主に義務付けられており、母性健康管理指導事項連絡カード等により主治医からの指示があった場合にも、速やかに適切な措置を講じましょう。

    ◆産前産後休業とは

     出産予定・出産後の女性従業員であれば誰でも請求できるもので、取得できる期間は、

    〇産前休業…出産予定日からさかのぼって6週間(42日)

    〇産後休業…出産日から8週間(56日

    となっており、産前休業は請求することで取得(任意)できますが、産後休業は請求の有無に関係なく休業(義務)となります。

     休職中の給与については原則として支払う必要はなく、産休中は健康保険より出産手当金を、育休中は雇用保険から育児休業給付金が支払われることで生活の補償となり、出産から7週間目(43日目)からは本人が希望し医師の許可があれば就労可能となります。

     また、産前・産後休業中の期間及びその後30日間の解雇や、妊娠や出産、育休などを理由とする解雇や減給、降格などの不利益な取り扱いは禁止されており、配転や処分等が生じる際の取り扱いには注意が必要です。

    安心して出産、子育て、就業できるよう、従業員には妊娠がわかったら出産予定日や休業の予定を早めに会社へ申し出てもらうようにし、引き継ぎなどに備えましょう。

    ◆出産10万円クーポン配布

     政府は、総合経済対策のひとつとして、23年1月1日以降に生まれた子ども一人当たり10万円分のクーポンを配布する方針です。

    22年4月から12月末までに生まれた子についても5万円分の支給を予定しています。

    従業員の健康を確保しよう

    《勤務間インターバル制度》

     10月に公表された「自殺総合対策大綱」で、自殺総合対策における当面の重点施策の中に「勤務問題による自殺対策をさらに推進する」という項目が掲げられています。内容は大きく3つに分かれており、

    ①長時間労働の是正

    ②職場におけるメンタルヘルス対策

    ③ハラスメント防止策

    となっていますが、長時間労働を是正するための策として、「勤務間インターバル制度の導入促進」が初めて盛り込まれました。

     勤務間インターバル制度は、企業の努力義務として19年4月より施行されており、前日の就業時間から翌日の始業時間までの休息時間(勤務間インターバル)を一定時間確保するというものです。

     EUでは11時間の勤務間インターバルを定めるなど休息に関する取り組みが進んでいますが、日本でも制度化されて以降関心が高まっており、24年より自動車運転者の勤務間インターバルを9時間とすることが義務付けられるなど、少しずつ前進しています。

    また、勤務間インターバルに関する取り組みは過労死大綱の中にも組み込まれており、企業に対し周知や導入する割合に数値目標を掲げて取り組んでいるところです。

     日々働くにあたり生活時間や睡眠時間など一定の休息時間を必ず取れるようにするというこの取り組みは、従業員の疲労の蓄積を抑え健康を確保する措置として非常に有効であり、今後、制度としてより踏み込んだ内容となることも予測されています。

    ◆雇調金特例、廃止へ

     コロナ下で設けられていた雇用調整助成金の特例について、これまで何度も見直されてきましたが、23年1月末をもって廃止されることとなりました。

     雇用調整助成金は、業績が悪化した企業が従業員を解雇や雇い止めするのを防ぐのが狙いであり、特例により上限額を上乗せしてきましたが、コロナと共生する道筋が見えてきた今は労働移動等を後押しするためにも、メインとなる支援の方法を変えていく方針です。

     3月まで要件緩和の一部は継続されますが、4月以降は情勢を踏まえて再検討となります。

  • ✔雇用管理の見直しを

    2023年02月16日 2022年07月22日

    《22年10月より、社会保険適用拡大》

     年金制度が改正されたことによって、22年10月以降、これまでパートやアルバイトで働いていた人も社会保険の加入対象となる場合があります。それは次の通りです。

    ・週の所定労働時間が20時間以上

    ・賃金月額が8万8千円以上(年収106万円以上)

    ・勤務期間が2ヶ月以上を見込まれること

    ・学生ではないこと

    ・正社員と労働時間が長いパートの合計人数が101人以上(フルタイムの正社員や、労働時間が正社員の75%以上のアルバイト等)

    ※24年10月以降は51人以上の事業所も対象

     扶養の範囲内で就労したいなど対象となる従業員の意向を確認するとともに、会社の方針として今後従業員をどのように活用していくのか方針を定めること、社会保険適用対象者の確認や適用拡大後の社会保険料の算出をシミュレーションし、労使双方にとってベストの就労時間を見定め、必要であれば人員補充など雇用管理策を講じておきましょう。

    《新たな業種も検討》

     厚労省では、現在5人以上の従業員を雇う個人事務所で製造や土木などの16業種に厚生年金への加入を義務付けていますが、この他にも新たな業種を選定し厚生年金加入対象となる業種の拡大に向け検討に入る方針です。

     22年10月より「士業」(弁護士や弁理士など)が追加されることが決まっていますが、今後の社会保障審議会において、飲食店や旅館、理美容、農林水産業などの業種が候補として上がっています。

     厚生年金の保険料は労使で折半するため、実現に向けて雇用者側の反発も予想されていますが、大手飲食店と個人経営の飲食店を比較し同等の業務内容であっても就業先の違いにより将来の年金に差が生じる不公平を解消する狙いもあり、コロナ禍が落ち着き今後の需要回復で働き手不足となった場合に、厚生年金に加入できることにより待遇改善へとつながり、就労を後押しする効果につながることも期待されています。

     これらは今夏の審議会より議論が進められる予定で、健康保険の加入についても同時に議論されるとしています。

  • ✔受給時期を考える

    2023年02月16日 2022年06月17日

    《老後の生活と資金確保のため》

     公的年金制度は、現役世代が払った保険料を高齢者に給付する「世代間での支え合い」の仕組みで、20歳以上の全ての人が共通して加入する国民年金と、会社員が加入する厚生年金などによる、いわゆる「2階建て」と呼ばれる構造となっています。

     老後には全ての人が老齢基礎年金を、厚生年金などに加入していた人は、それに加えて老齢厚生年金などを受け取ることができます。

     年金には「老齢給付」「障害給付」「遺族給付」の3種類があり、老後の生活、一定以上の障害が残った場合の生活費、働き手がなくなった時に残された遺族の生活をそれぞれ保証するために支給されます。

     この4月から年金制度の一部が改正されていますので、自身の生活を支える手段である年金が自身にとってどのようなものなのか把握しておくようにしましょう。

    ≪繰下げ受給年齢引上げ≫

     年金の受給開始時期は、受給権者の就労状況等に合わせ自身で選択することができます。

     現在基準となっている65歳から受給を開始するのではなく、66歳以降に受給を開始する場合を「繰下げ受給」といいますが、年金額は65歳から繰り下げた月数により増額され、1ヵ月あたり0.7%の増額となります。

     この繰下げ上限年齢が、22年4月よりこれまでの70歳から75歳に引き上げられており、年金の受給開始時期を75歳まで自由に選択できるようになっています。

     対象となるのは、22年3月31日時点で、

    ①70歳未満の方(1952年4月2日以降生まれの方)

    ②老齢年金の受給権を取得した日から起算して5年を経過していない方(受給権発生日が2017年4月1日以降の方)

    のいずれかに該当する方で、いずれも該当されない方の繰下げ上限年齢は「70歳」となります。

     同様に、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰上げ受給することも可能となりますが、繰上げ受給を請求した時点に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません。減額率は1ヵ月0.4%で、1962年4月1日以前生まれの方は1ヵ月0.5%となります。

  • ✔ハラスメントを学ぶ

    2023年02月16日 2022年05月19日

    《予防から再発防止、適切な措置を》

     私たちが毎日多くの時間を過ごすことになる職場では、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント等のハラスメントに遭遇する可能性が少なくなく、安全な就業環境を確保するためにもハラスメントへの防止策、対応策などの構築が非常に重要となります。

    ■職場のパワハラとは

    ①優越的な関係を背景とした言動であって

    ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

    ③労働者の就業環境が害されるものであり

    これら3つの要素を「すべて満たすもの」をパワーハラスメントといい、

    客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しないものとされています。

     具体例としては、同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難である言動、業務を遂行するための手段として不適切な言動などのほか、その言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ就業環境が不快なものとなり能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が従業する上で看過できない程度の支障が生じることなどが挙げられています。

    ■職場のセクハラとは

     職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、労働環境が害されることがセクシュアルハラスメントにあたります。「性的な言動」とは、性的な関係を強要する、必要なく身体に触れる、ワイセツ図画を配布・提示することなどはもちろん、性的なからかいや冗談、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなども含まれており、異性だけではなく同性に対する言動も含まれでいます。

     これら、ハラスメントを防止するためには、どのようなものがハラスメントに当たるのか、その内容対処の方針等を明確化した上で行う周知と啓発が非常に重要です。

     また、相談に応じる体制(窓口の設置など)を整え、相談内容や状況に応じ迅速かつ適切に対応相談者、行為者に対して措置を行い、再発防止に向け措置を講じることになります。

     

  • ✔キャリアアップ助成金

    2023年02月16日 2022年05月19日

    《22年4月1日以降の変更点概要》

     この助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを後押しするため、正社員化、処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。

    ①正社員化コース

     有期雇用労働者から無期雇用労働者へ転換した場合の助成が廃止になります。

    ※「人材開発支援助成金の特定訓練修了者を正社員化した場合の加算」の対象となる訓練が追加される予定(時期未定)

    ②正社員化コース・障害者正社員化コース

     正社員と非正規雇用労働者の定義が変更となります。こちらは、両コースとも22年10月1日以降の正社員転換に適用されます。

    「正社員定義」※変更点太字

     同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者。ただし、「賞与又は退職金の制度」かつ「昇給」が適用されているものに限る。

    「非正規雇用労働者定義」

     賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6ヶ月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者。

    ※例 契約社員と正社員で異なる賃金規定(基本給の多寡や昇給幅の違い)などが適用されるケース

    ③賃金規定等共通化コース

     有期雇用労働者等に関して、正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成されますが、対象労働者(2人目以降)に係る加算が廃止されます。

    ➃賞与・退職金制度導入コース

     諸手当等(賞与、退職金、家族手当、住居手当、健康診断制度)の制度共通化への助成を廃止し、賞与または退職金の制度新設への助成と見直されます。非正規雇用労働者に対する制度の新設のみで助成が可能です。

     また、対象労働者(2人目以降)に係る加算は廃止となります。

    ⑤短時間労働者労働時間延長コース

     有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成されるものですが、支給要件が週5時間以上から週3時間以上へと緩和され、また、助成額の増額措置等が22年9月末より24年9月末(予定)まで時限措置が延長されます。

  • ✔パワハラ防止関連法、全面施行へ

    2023年02月16日 2022年04月26日

    《中小企業も対象に》

     20年6月1日、パワハラ防止関連法が施行されました。まずは大企業から、そして22年4月1日より中小企業においても施行されることで、全面施行となります。

     このパワハラ防止関連法というのは、改正労働施策総合推進法(総称としてパワハラ防止法)に加え、同時に改正された男女雇用機会均等法、女性活躍推進法、労働者派遣法、育児・介護休業法のことで、パワハラだけでなくセクハラやマタハラなども含めハラスメントへの対応強化が図られており、これらをまとめて関連法としています。

     近年では、様々なハラスメントがトラブルとして増加しており、個別労働紛争解決制度の施行状況などをみても、「いじめ・嫌がらせ」として寄せられる相談件数は20年に微減したものの増加傾向にあるといえます。

     これらの情勢を受け、パワハラ防止に関する法律等がまとめられ施行されることになり、ハラスメントの防止・対策を実施することが企業において義務化されることになりました。

    《パワハラ指針について》

     パワーハラスメントの代表的な行為の類型は

    ①身体的な攻撃(暴行・傷害)

    ②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

    ③人間関係の切り離し(隔離・仲間外し・無視)

    ➃過大な要求(明らかに遂行不可能な業務の強制)

    ⑤過小な要求(能力や経験と見合わない仕事を命じることや、仕事を与えないこと)

    ⑥この侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

    の6つに分けられています。

     これらは、「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」として示されていますので、どのような行為がハラスメントに該当するのかについて、労使ともに周知を徹底しましょう。

     ハラスメントを恐れ指導が委縮してしまったり、見ないふりをしてしまう、なんでもハラスメントとして指導に耳を貸さないという状況に陥らないよう、具体例も参考に徹底した周知を行うとともに、互いに理解を深め、ハラスメントを発生させない環境づくりをし、相談者の不利益としないことを大前提とした相談窓口の開設など、発生時の対応、体制作りを整備しておきましょう。

  • ✔年金制度改正法

    2023年02月16日 2022年03月25日

    《22年4月より施行されます》

     20年5月に成立した年金制度改正法ですが、交付日から24年10月にかけて順次施行されており、22年4月1日からは①在職中の年金受給のあり方の見直し②受給開始時期の選択の拡大、③確定拠出年金の加入年齢の引き上げとともに受給開始時期等の選択肢が拡大されることになります。

    ①在職中の年金受給のあり方の見直し

    ◎在職定時改定(新設)

     高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため、在職中の老齢厚生年金受給者(65歳以上)の年金額を毎年定時(年一回、10月)に改定することになります。

     これまで老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労した場合は、資格喪失時(退職時・70歳到達時)に、受給権取得後の被保険者であった期間を加えて老齢厚生年金の額を改定していましたが、高齢になっても長く働く労働者のモチベーションアップにもと、退職を待たずに年金額に反映されます。

     これにより、支給年金額が増え給与額を調整するべく雇用契約内容見直しの希望が出る事も考えられるため、対応できるように備えておきましょう。

    ◎在職老齢年金について

     60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止とならない範囲が拡大に。

     支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準が現行の28万円から47万円に引き上げられ、支給停止調整変更額は廃止(前年度47万円)になります。

    ②受給開始時期の選択の拡大

     現在60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を、60歳から75歳の間に拡大されます

    ③確定拠出年金について

     加入年齢を引き上げるとともに、受給開始時期等の選択肢が拡大されます。

    企業DC・・・厚生年金被保険者のうち65歳未満→70歳未満に

    個人型DC(iDeco)・・・公的年金の被保険者のうち60歳未満→65歳未満に

  • ✔起業失敗でも失業手当受給可能に

    2023年02月16日 2022年03月25日

     会社を辞めて起業をした場合、失業手当を受給できる権利の期間を最大で3年間留保できるようにする等、厚労省の諮問機関である労働政策審議会の部会でまとめられ、1月から始まった通常国会にて雇用保険法などの改正案として出されています。

     雇用保険に一定期間加入した人は、離職の翌日から1年間は求職活動中に失業手当を受け取れる権利がありますが、離職後すぐに起業したもののうまくいかなかった場合、この受給可能期間が経過し、権利を失ってしまっていることが多く、課題としてあげられていました。

     そこで妊娠や出産などで求職できない場合の特例と同様に、離職後に起業した場合、廃業した後に就職活動に取り組むことを条件に、日額上限額を約8300円とし、手当を受け取る権利を最大3年間保留できる特例を設ける案がまとめられました。

     日本の労働法制は起業したりフリーランスになると公的な保護が弱くなる傾向がありますが、多様化する働き方を前に、制度の安全網の見直しが進められています。

  • ✔賃上げ税制の拡充へ

    2022年02月21日 2022年02月21日

     昨年末、政府・与党がまとめた22年度税制改正大網が公表されています。

     中小企業についてみてみると、これまで1.5%以上の賃上げで給与増加分の15%を減税していましたが、22年度以降は増やした人員分も考慮されることになり、全雇用者の給与総額を前年度より1.5%以上増やせば15%、2.5%以上なら30%を法人税から控除するとしています。

     さらに、従業員向けの教育訓練費を前年度より10%以上増やすことで、控除率は10%加算され、法人税の控除率は最大40%となり、長期的視点で、一人ひとりへの積極的な賃上げを促したいとしています。

     しかし、現状で利益を上げ法人税を納めている中小企業は4割に満たず、中小企業が賃上げをしやすくなる制度を税制以外にも求める声も少なくなく、新政権へはその手腕が期待されています。

     他にも、交際費等の損金不算入制度について、適用期限を2年延長し、さらに、中小法人に関わる損金算入の特例期限についても適用期限が2年延長されることになっています。

  • ✔雇用保険料、引き上げへ

    2023年02月16日 2022年02月21日

    《労働者の負担、約1.7倍に》

     雇用保険には保険料を労使折半で負担する「失業等給付」と「育児休業給付」、企業だけが負担する「雇用保険2事業」(雇用安定事業・能力開発事業)があります。

     新型コロナウイルスの感染拡大へ対する対策として雇用調整助成金の大規模な支出が続き保険財政が悪化していることにより、失業手当などに充てる休業等給付の保険料率は秋以降引き上げられることになりました。

     現在の失業等給付の保険料率は賃金の0.2%ですが、22年10月以降半年間は0.6%に引き上げ、また、雇用保険2事業についても、22年4月に、現在の0.3%より0.35%へ引き上げられます。育児休業給付については0.4%で据え置く予定となっています。

     そのため、他事業を加えた全体の保険料率は、22年10月以降は現行の0.9%から1.35%となり、労働者負担分は0.3%から0.5%になり、月給30万円の人を例にすると、保険料が月900円から1500へ増加することになり、約1.7倍となります。

  • ✔「選ばれる国」へ

    2023年02月16日 2022年01月20日

    《サポートの充実を》

     明けましておめでとうございます

     21年の生産年齢人口は、ピークであった95年に比べて、13.9%減の約7千5百万人と労働力不足が顕著になる中、生産性をどう押し上げていくのか、という非常に大きな課題を抱えてのスタートとなりました。

     貴重な経済活動の担い手として熱望されている外国人労働者については、在留資格である特定技能が、事実上「在留期間を無くす方向」で調整が行われており、22年3月に正式決定し改定への道筋をつけたいとしています。

     しかし、「選ばれる国」としての体制が整っているとは言い難く、仲間が安心して働けるためにサポートの充実が急がれています。

     年末に新型コロナウイルスの新しい変異株が見つかりましたが、治験などの結果を待たず入国停止などの水際対策の実施が素早く行われ、先手をとり対処をしていくという手法が、新政権でうまく機能しているようです。

     今後も変異株等が発見されるたび、月単位の制限が課されることも予想されますが、感染予防対策を講じるとともに、社会活動をさらに深めていける1年になりますよう皆で知恵を出し合ってまいりましょう。

  • ✔増える転倒、訴訟にも

    2023年02月16日 2022年01月20日

    《転倒によるトラブルを防ごう》

     業務中の事故として常に上位に挙げられるのが、墜落・転倒です。

     しかし、こうした労災だけではなく、日常生活の中でも転倒は多くみられ、訴訟へと発展してしまうケースも少なくありません。

     野菜売り場の床にあった野菜の水滴により転倒し骨折してしまったことで訴訟となり、店側に2千万円を超える賠償が命じられたケースや、レジ前に落ちていた天ぷらによって転倒し最高裁へと持ち込まれているケース、、商業施設内のアイスクリーム店前に落ちていたアイスクリームにより転倒し施設側に約860万円の賠償が命じられたことなどがそれにあたります。

     これらは、店側にその事故が起こりうることが予測できたか、また、回避のための措置を講じていたかどうかが判断の基準となることが多いようです。

     16年に消費者庁がまとめたデータでは、商業施設やスーパーなどで起きた転倒事故は、約7年間で602件発生しており、その内、何らかの理由により床が濡れていたことが原因とされるものは224件に上がります。

     雨などにより濡れていた場合や、商品についていた氷や水により濡れた場合などが挙げられますが、天候や商品によって一般的に予想ができると思われることについては定期的に清掃を行うなどの対策は当然であり、さらに滑り止め用にマットを活用したり、利用者に対しても、足元等への注意を促すことは当然の対策であると考えられます。

     一方、そのような売り場でない事務を行うようなオフィスであったとしても、些細な配線やそれをカバーする段差、降りていた小さな紙切れが思いがけない転倒を引き起こす可能性もあり、転倒する可能性がゼロではない以上、安全対策を行う必要があります。

     日頃から清掃に注意を払うことはもちろん、いつもの会話の中で危険につながると気づいたことは早めに改善し、注意が必要なことに対しては情報を共有しておきましょう。

     また、裁判では利用者側に対しても注意を払う責任が指摘されることも少なくなく、まずは足元へ注意を向け、危険があれば改善策をとり、共に転倒を防げるようにしましょう。

  • ✔信頼関係の構築を

    2023年02月16日 2021年12月21日

    《コミュニケーションを見直す》

     現代は働き方の選択肢が増えていますが、コロナ禍がそれに拍車をかけ、多様化した出社スタイルにより従業員同士の接点が以前より減少したことで生じた、社内コミュニケーション不足を課題とする企業が増えています。

     HP総研が実施した「社内コミュニケーションに関するアンケート」では、課題があると回答した割合が74%と非常に多くなっていおり、具体的には部門間や事業所間、経営層と社員のコミュニケーションを課題に上げる回答が半数を超えています。

     「人と人がひとつの目標に向かって協力していく」ことがビジネスの根幹を成す(株式会社パソナ)、そのためにはコミュニケーションがなくてはならないものであり、なんとかその機会を探るものの即効性がある対策はなかなか難しく、技術やスキルだけで信頼関係を築き上げづらいことからも、現状把握はできているものの有効な対策を取れずにいる場合が多いようです。

     では、このままコミュニケーションの機会が低下した場合、どのようなことが考えらえるでしょうか。

     まず、職場でコミュニケーションの接点が減少することにより、自分の受け持つ仕事以外への意識が向きづらくなり、自分の仕事に対する意欲の低下や必要性への疑問へと繋がり、離職を選択するほどモチベーションが低下する可能性があります。

     さらにメールやSNSでのやり取りが増加した場合、文字でのコミュニケーションは対面時より温かみが伝わりにくく何でもない内容が冷たく感じられ受信者は不安を覚え孤独を感じやすくなるといわれていますが、発信者側もその不安に気づきにくいため、孤独を見過ごしてしまうことが指摘されています。

     これらを解消するためには、やはりコミュニケーションの取り方を見直しながら、社風に合う形を探っていくことが重要となります。

     コロナ禍では忘年会のような機会が減ってしまったため、オンライン社員旅行やオンラインレク、グランピングなどを企画する企業もあるそうですが、対話と親睦のバランスを図りつつ、日頃から何でもない雑談のできるような職場環境を整えていきましょう。

  • ✔留学費用等の返還請求

    2023年02月16日 2021年12月21日

    《みずほ証券事件 東京地裁判決》

     業務命令や、個人のスキルアップなど様々な目的で、企業が費用を負担し社内外での勉学等の機会を設けることがあります。

     金融業を生業とするY社では、社員育成のためのプログラムが多数ありますが、Xは、一定の基準を満たした入社4年目以降の社員を対象とした公募留学制度に応募し、約3年間の留学を経て帰国、しかし、配属先への不満を感じ約4カ月後に退職(転職)しました。

     Y社は、Xとの間で「留学期間中にY社を特別な理由なく退職する場合あるいは解雇される場合、また、留学終了後5年以内に、特別な理由なく退職する場合あるいは解雇される場合には、Y社が負担した留学に関する以下の費用を退職日までに遅滞なく弁済する」との誓約書を交わしていたため、Xに対して留学費用の返還請求を起こしました。

     労基法16条では「使用者は労働契約の不履行についての違約金を定め、又は、損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定められ、労働者の自由意思を不当に拘束して労働関係の継続を強要することを防止するための規定があり、本件で交わされている誓約書がこれに違反するかが問われました。

     本件での留学についてみてみると、まず、業務命令ではなく公募制であることや帰国後の配属先も留学で得た資格等が必ずしも反映されたものではないこと、留学先や履修科目などをはじめ、留学期間中の生活も含め大部分が労働者の自由な意思に委ねられたものであり、むしろ労働者個人の利益となる部分が相当程度大きいものであること、債務免除までの期間も5年で不当に長いとまではいえないこと等も踏まえてみると、Xとの労働関係の継続を強要するものではなく、この返還合意は16条に反するとはいえないと判断。

     また、Xは返還に関する十分な説明や熟考する時間もなく署名させられたと主張するが、事前に「費用の返還」についてはガイダンス等で説明され、誓約書と同一内容の文章も署名の一か月前には渡されていることから、Xは内容を理解した上で署名しているといえ、この返還合意はXの自由な意思に基づいたものと認めるのが相当であるとし、留学関連費用3045万円、全額返還を命じました。

  • ✔負荷要因も判定要素へ

    2023年02月16日 2021年11月22日

    《脳・心臓疾患の労災認定基準 改正》

     心筋梗塞などの「心疾患」、脳梗塞などの「脳血管疾患」について、発症に至るには様々な要因がありますが、仕事が主な原因で発症する場合もあります。

     これらは「過労死」とも呼ばれていますが、この業務による過重負荷を原因とする脳出血や心筋梗塞等の疾患の労災認定基準が、約20年ぶりに改正されました。

     これまで基準となっていたのは01年に改正されたものでしたが、当時と比べ働き方が多様化し職場環境も変化してきていることから、働く人の実態に応じてより柔軟に判定ができるよう、最新の医学的知見も踏まえ、見直されることとなりました。

    長時間の加重業務の評価にあたり労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化しました

    ・発症前1ヵ月におおむね100時間または発症前2ヶ月間ないし6か月間にわたって、1ヶ月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合について業務と発症との関係が強いと評価する(改正前の要件)ことを維持した上で、この水準に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合には「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、業務と発症との関係が強いと評価できることを明確にしました。

    長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直しました

    ・勤務間インターバルが短い勤務や身体的負荷を伴う業務、心理的負荷を伴う業務などが評価の対象として追加されました。

    短期間の過重業務・異常な出来事の業務との関連性が強いと判断できる場合を明確化しました

    ・短期間の過重業務の例・・・発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合や、発症前おおむね1週間継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなどの過度の長時間労働が認められる場合

    ・異常な出来事の例・・・業務に関連した重大な(人身)事故に直接関与した場合、事故の発症に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に携わった場合、など

  • ✔ハローワークがより便利に

    2023年02月16日 2021年10月20日

    《求職者からの応募を直接受けられる「オンライン自主応募」》

     ハローワークが運営する、ハローワークインターネットサービスに新機能が強化され、求職者、求人者ともにさらに使いやすくなります。(事前開示が必要です。)

     強化されたのは次の3点です。

    ①事業主向けの専用ページである「求人者マイページ」で、オンライン職業紹介を受ける「オンラインハローワーク紹介」が利用可能

    ②求職者がオンラインで応募した場合、応募書類の管理や採否入力が効率化

    ③求職者からの応募を直接受けられる(オンライン自主応募)

     この「オンライン自主応募」とは、ハローワークインターネットサービスに掲載した求人に、求職者がハローワークを介さずにマイページを通じて直接応募をすることをいい、ハローワークインターネットサービスのみの利用者も応募できるため、応募者層が広がる可能性があるものです。ただし、ハローワーク等の職業紹介を要件とする助成金の対象とならないこと、また、受け付ける際には求人者マイページから変更する必要があります。

    ※サービス開始 21年9月21日(火)予定

  • ✔ITフリーランス等も特別加入の対象

    2023年02月16日 2021年10月20日

    《自転車を使用して貨物運送事業を行う者も対象に》

     労災保険の特別加入制度とは、労働者以外の方(事業主に雇用され賃金を受けている方以外で、事業主、自営業主、家族従業員など)でも一定の要件を満たす場合に任意加入でき、仕事中の怪我や病気などの保証を受けることができる制度です。

     21年4月1日からは芸能関係作業従事者柔道整復師の方などが特別加入の対象となりましたが、21年9月1日から、加入できる対象がさらに拡大されています。

     これまで、自動車及び原動機付自転車を使用して貨物運送事業を行う者を一人親方として特別加入の対象範囲としていましたが、自転車を使用して貨物運送事業を行う者も対象に、また、情報処理システムの設計や開発、管理、監査、セキュリティ管理などの業務や、作業をされるITコンサルタントや運用保守エンジニアなど、ITフリーランスの方も特別加入できるようになりました

    加入するためには、加入したい団体への申込手続きが必要となります。

  • ✔目安一律28円に

    2023年02月16日 2021年09月17日

    《21年度 地域別最低賃金額改定目安》

     中央最低賃金会議において示される、その年度の地域別最低賃金額改定の目安は、都道府県を4つのランクに分け決められます。

     しかし、今年度はすべてのランクで28円の引き上げ額の目安が示されており、そのため全国加重平均も28円となり、1978年に目安制度が始まって以降の最高額となっています。

     未だコロナ禍にあることでも労使の意見は不一致となりましたが、政府の掲げる中小企業支援などの政策があることはもちろん、将来の安心や経済の好循環、非正規労働者の処遇改善などを重視する必要があること、また、ワクチン接種が始まったことや、産業全体では回復の兆しが見えていることなどからも最低賃金を約3%引き上げていたここ数年と大きく変わらない状況であると結論づけられたため、今回の引き上げ目安額となっています。

     最終的に10月を目処に各都道府県で決定し適用されますが、目安どおりであれば、最低賃金の最高額は1041円、最低でも820円、全国平均では930円となる見込みです。

  • ✔65歳以上が対象に

    2023年02月16日 2021年09月17日

    《雇用保険の二重加入、特例を試行》

     複数の雇用契約を結び、一定の期間内に2つ以上の就業場所で働く「マルチジョブホルダー」という働き方の増加を受け、週所定労働時間が合計20時間以上ある労働者の内、65歳以上の労働者については、二重加入を認める雇用保険の特例が施行されます。

    ■特例の要件

    ①2つ以上の事業主の適用事業に雇用される65歳以上の労働者

    ②それぞれ一つの事業主の適用事業における1週間の所定労働時間が20時間未満

    ③2つの事業主の適用事業における1週間の所定労働時間合計が20時間以上(1週の

    所定労働時間が5時間以上の事業所を合算)

    施行日 22年1月1日 (5年後の状況などに応じて見直す方針)

     また、事業主が就業状況を把握し手続きを行うことは困難であるため、労働者自身で、住居地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に対し届出を行うこととなっており、それも含めて周知をよろしくお願いします。

  • ✔男性版「産休」整備

    2023年02月16日 2021年08月19日

    《育児・介護休業法 改正》

     21年6月9日に、改正育児・介護休業法が公布されました。

     これらは育児休業に関するもので5つの項目にまとめられており、男性は1歳までに計4回の育休取得が可能となるなど、男性もより柔軟に育児に取り組める体制の支えとなるものになっています。

    ①出生直後の時期に柔軟に育児休業を取得できるようになります

     現行の制度とは別に取得可能であり、この出生後8週間以内に「4週間まで取得可能」となります。申出期間は休業の2週間前までですが、この改正を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1カ月前まですることができます。

     この休業は分割して2回取得することが可能で、労使協定を締結していれば、労働者が合意した範囲で休業中に就業することも可能となります。

    ※新制度も育児休業給付の対象

    施行日 公布後1年6ヵ月以内の政令で定める日

    ②雇用環境整備、個別の周知・意向の確認の措置が事業主の義務になります

     育児休業を取得しやすい雇用環境の整備や、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置を行うことが義務付けられます。環境整備の具体的な内容や周知の方法は、複数の選択肢からいずれかを選択する措置となる予定です。

    施行日 22年4月1日

    ③育児休業を分割して取得できるようになります

     新制度とは別に、分割して2回まで取得可能となり、1歳以降に延長する場合も育休開始日を柔軟化します。

    施行日 公布後1年6ヵ月以内の政令で定める日

    ➃有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和されます

     これまでの「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が撤廃され、「1歳6ヵ月までの間に契約が満了することが明らかでない」のみになります。

    施行日 22年4月1日

    ⑤従業員数が一千人超の企業の育児休業取得状況の公表が義務化されます

    施行日 23年4月1日

  • ✔体があってこその労働

    2023年02月16日 2021年08月18日

    《再発防止策込みでの、和解成立》

     全国に150店以上展開する24時間営業の外食チェーン店Y社(本社 北海道)の名古屋支店で店長として勤務していたX(当時49歳)は、2015年10月、就業中にくも膜下出血と脳内出血を発症し、右半身不随と言語障害などの重い後遺症が残りました。その後は介護施設に入所しましたが、約1年半後に自ら命を絶ってしまいます

     遺族が労基署に労災を申請したところ、17年4月に適応障害を発症していたこと、発症と業務の因果関係は認められました(18年3月)。しかし、自殺との因果関係は否定されたため労働局へ審査を請求、また、残業や過重な労働が原因であり安全配慮義務を怠っていたとし損害賠償等を求めY社を提訴しました。(18年10月)

     当時のXは、直近2ヶ月間で月平均98時間30分の時間外労働と過労死ラインを超える状況で、発症当日も正社員はX1人で他にバイトが7~8人という体制で、深夜勤務も含めた長時間労働が続いていました

     労働局による審査では、後遺症による社会復帰の難しさを苦にした精神障害が原因であるとされ、労基署の判断を取り消し、自殺も含めて労災であると認定されました。

     裁判では、当初、Y社は請求棄却を求めていましたが、21年3月30日に遺族との和解が成立し、和解条項に再発防止策も盛り込まれ、さらに、その内容が一部公表されたことから画期的であると関心を集めています。

     公表された再発防止策とは、

    ①21年4月1日付で、全従業員を対象に健康診断受診のための特別有給休暇を創設する

    ②1時間以上の勤務間インターバル制度の導入を検討し、和解成立から1年以内を目処に必要な規定を就業規則に記載する

    というもので、Y社のように常に人員を配置しておかなければならないという営業スタイルであり人員が少ないのであればなおのこと、労務管理として当然考えなければならない措置といえます。

     20年ぶりに脳・心臓疾患の労災認定基準が見直される方針も示されています。

     労働環境が違えば基準値以下でも疾患の種となり、それを未然に防ぐ仕組みが重要です。

    ◎労災認定基準、見直しへ

     脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会の報告書(案)によると、現状の過労死ラインは維持しつつも「勤務時間の不規則性」を総合的に考慮して業務上外を判断できるよう見直す方針が示されています。

     現状でも総合的に判断することとなってはいますが、過労死ラインとされる時間外労働時間が「月80時間」「直近100時間」以下である場合の労災認定率は低く、この時間が認定を左右していることは否めない状況です。

     そのため、時間以外の要因を具体的に明記し判断基準として挙げていくことで適切な労災認定につなげていきたいとしています。

     今回、勤務時間の不規則性として挙げられているのは、

    ①拘束時間の長い勤務

    ②勤務間インターバルが概ね11時間未満

    ③休日のない連続勤務

    ➃不規則な勤務、交代制勤務、深夜勤務など

    で、過労死ラインとされる基準に達していなくても負担の大きさが認められる場合は達しているケースと同等に認定できるよう、これらの要因も重視する考えです。

  • ✔扶養基準を明確化

    2023年02月16日 2021年07月20日

    《共働き夫婦の被扶養者認定について》

     夫婦共同扶養、いわゆる共働き夫婦の子に対する扶養者の認定について、これまでの通知(昭和60年通知)を廃止し、新たな取扱基準を定めた通達が21年4月に公表されており21年8月1日より適用が開始されます。

     ポイントは、次のとおりです。

     ●夫婦とも被用者保険の被保険者の場合には、以下の取扱いとする。

     被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする

     夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする

     夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当はこれに相当する手当(以下「扶養手当等」という。)の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない

     ➃被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい

     ⑤➃により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する

     ⑥夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない。

    その他、「夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合の取扱い」、「主として生計を維持するの者が健康保険法第43条の2に定める育児休業等を取得した場合の取扱い」なども定められており、詳しい内容についてはお問い合せ下さい。

  • ✔労使協定と計画的付与

    2023年02月16日 2021年07月20日

    《英会話教室雇い止め事件ー東京高裁》

     これは、英会話教室の講師を務めていたAが有給休暇を取得したところ無許可での欠勤と評価され違法な雇止めをされたとして、雇用継続などを求め地裁に訴えたものの棄却された訴訟の控訴審です。

     Aは、都内に本社を置く英会話教室B社で、常勤講師として有期雇用契約(1年毎に契約更新中)で採用されていました。

     平成28年(2016年)11月に育児休業等に先立ち年次有給休暇を取得したところB社就業規則に「5日を超える有給休暇(15日間)については、取得する時季を指定して一斉に取得する計画年休とする」としていたため有給と認めず、欠勤扱いにしました。

     Aは、この件について、労働委員会に申し立てますが、その審議途中の2017年2月に、勤務態度不良を理由に雇止めされたため、B社に対して雇用継続と未払い賃金の支払いを求める訴訟へと踏み切ります。

     本件の争点はAが取得した有給休暇が欠勤か否かという点でした。

     年次有給休暇は一定の要件を満たした労働者に付与されるもので、事業の正常な運営を妨げる場合以外は労働者が請求する時季に与えなければなりません

     また、年休が10日以上ある労働者に対しては、労働協定を締結することで法定の年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分については使用者が指定する日に有給を付与することができます(計画的付与)

     B社の年次有給休暇は勤続6ヵ月に達した講師に一律20日間与えられ、15日間は会社側が取得時季を指定して取得させる計画的付与のような制度をとっており、就業規則にも明記していましたが、計画的付与の採用要件である労使協定は締結されていませんでした

     そのため、法定の有給休暇を超えた部分について使用者が法定の有給の部分と法定を超えた部分を区別しないで計画年休として指定しているため「法定を超えた有給に関する指定である」と特定することができないためこの指定は無効であり20日間全て有休が自由に請求できると判断

    無断欠勤の事実もなかったとして、当該雇止めは無効であり現職復帰と未払い賃金の支払いを命じました。

  • ✔母健カード様式変更

    2023年02月16日 2021年06月17日

    《21年7月1日より運用されます》

     男女雇用機会均等法により、妊娠中・出産後1年以内の女性労働者が保健指導・健康診査の際に主治医や助産師から指導を受け、事業主に申し出た場合

    母性健康管理措置として、通勤緩和や休憩に関する措置などを講じることが、事業主に義務付けられています。

     そして、事業主が適切な措置を講じることができるよう、指導事項は母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)により伝達されます。

    カードの様式は、21年7月1日より変更されますのでご確認ください。

     また、母健措置の対象となる労働者は、時間外、休日労働、深夜業の制限等を主治医等からの指導がなくても請求できることになっていますので、対応をよろしくお願いします。

     なお、コロナ禍における特別措置として、作業等において新型コロナへの感染の恐れやストレスなどにより母体や胎児に影響があると指導を受けた当該労働者事業主に申し出た場合も、措置を講じなくてはなりません。

    ※適用期間 20年5月7日~22年1月31日

  • ✔賞与不支給報告書の新設

    2023年02月16日 2021年05月14日

    21年4月より、賞与不支給報告書の提出が必要

     21年4月より、賞与不支給報告書の提出が必要となっています。

     対象となるのは日本年金機構に登録している賞与支払予定月に、

    いずれの被保険者及び70歳以上被用者に対しても賞与を支給しなかった場合で、

    ①健康保険・厚生年金保険 賞与不支給報告書又は、

    ②船員保険・厚生年金保険 賞与不支給報告書の提出が必要です。

    支払予定月の前月に報告用紙が届くことになっていますので、改めてご確認下さい。

    「賞与支払届等に係る総括表」が廃止

     また、同年4月より、賞与支払届・算定基礎届の提出時に添付していた「賞与支払届等に係る総括表」が廃止となっており、4月1日以降提出分から、総括表の添付が不要となっています。

    廃止となる総括表
    〇健康保険・厚生年金保険 被保険者月額算定基礎届総括表
    〇健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届総括表
    〇船員保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払総括表

  • ✔現物給与の価額改正

    2023年02月16日 2021年05月13日

    《21年4月1日より適用開始》

     報酬や賞与の全部または一部が通貨以外のもので支払われる場合(現物支給)の価額が、厚生労働省告示により改正されています。

    •  現物給与とは、住宅(社宅や寮など)の貸与や食事、自社製品、通勤定期などで支給するもののことで、その現物を通過に換算し金銭と合算して標準報酬月額の決定行います。

     今回の改正では、43都道府県において食事の現物給与価額が、全都道府県において住宅の現物給与価額が変更されています。

     給与の締め日が月の途中の場合も多いと思いますが、現物給与は、給与の締日は考慮せず、4月分なら「4月1日から30日まで」を1か月分として計算し、その月の給与(金銭)と合算します。

     また、勤務地と社宅が別の都道府県に所在している場合は、勤務地の価額で算定し、

    本社と支店等が合わせて一つの適用事業所となっている場合それぞれの勤務地で計算します。

    派遣労働者の場合は、派遣元の事業所が所在する都道府県の価額で計算となります。

  • ✔労務トピックス

    2023年02月16日 2021年04月21日

    低額コースが新設

     中小企業や小規模事業者の、事業場内で最も低い賃金の引き上げを図る助成金である「業務改善助成金」について、賃金の引き上げ額を20円、また、30円とする低額コースが新設され、2月1日より助成金の申請受付が始まっています。(予算により変更あり)

    ■助成の対象となる事業場

     対象となるのは、

    ①事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内で

    ②事業場規模が100人以下の事業場で、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練などの設備投資を行った場合

    にその費用の一部が助成されます。

     助成率は、

    地域別最低賃金900円未満の地域のうち事業場内最低賃金が900円未満の事業場5分の4

    生産性要件を満たしていれば10分の9を助成、

    事業場内最低賃金が900円以上なら4分の3

    生産性要件を満たしていれば5分の4となっています。

     事業完了の期限は22年3月31日で、過年度に業務改善助成金を活用した事業場も、助成の対象となります。

  • 《労務トピックス》

    2023年02月16日 2021年03月24日

    ◎36協定届がなります◎

    行政手続きや社内書類などオンライン化に合わせて、押印レス化が進められています。

    21年4月から、36協定届ついても適用されることになります。

    今回の変更では、36協定届の様式が新しくなり、「36協定届における労使の押印欄が削除」され労働者、使用者の署名押印が不要となります。

    そして、「36協定の協定当事者に関するチェックボックスが新設」されます。

    4月以降も旧様式での届出は可能ですが、旧様式に協定当事者に関するチェックボックスの記載を直接追記するか、チェックボックスを記載を転記した別紙の添付が必要です。

    但し、署名や記名押印が不要となるのは協定書が別にある場合に限られますので、36協定書と36協定届を兼ねる場合は、従来通り記名押印又は署名などが必要となりますので注意が必要です。

    また、電子申請で届を提出する場合の電子署名、電子証明書の添付も不要となります。

  • ■給与の目安は4割減まで

    2023年02月16日 2021年01月14日

    《再雇用後の減額目安が示される》

     有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることが禁止された労働契約法旧第20条に関する裁判が、名古屋地裁で行われました。(20年10月28日判決)

     訴えたのは、自動車学校にて技能講習や高齢者講習を担当していた職員です。主任として従事していましたが、定年後に再雇用を希望し嘱託職員となりました。

     職務内容や責任の範囲は定年前と変わらなかったのですが、これまで月額16~18万円であった基本給は月額7~8万円と減額されており、旧第20条に反する不合理な待遇差であるとし差額の賃金の支払いを求めていたものです。

     会社側は、基本給は好不況や業績などを総合して決めており正職員との違いは違法ではないと主張しましたが、判決では、「本件での基本給の減額について、年功的性格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される若い正職員の基本給すら下回っており、生活保障の観点からも看過し難い水準に達している」と指摘されています。

     また、再雇用締結の際、賃金に関する労使の合意がなかったこと、嘱託職員への一時金額が正職員への賞与額を大幅に下回ったこと、さらに、教習の時間数に応じた手当などが減額されていることなどからも、以前と同じ業務なのに基本給が定年前の6割を下回ることは不合理な待遇格差であると判断、未払い賃金など約625万円の支払いを命じました。

     今後も裁判が続くかは現時点(20年12月1日)ではわかりませんが、今回の判決はこれまで最高裁で争われた長澤運輸事件など旧第20条に関する裁判の中で、初めて基本給について正社員との格差の是正を企業へ求める判決です。

     再雇用後の基本給を定年前の4~5割程度に設定している企業も少なくありません。業務内容が変わらないのに「基本給を定年時の6割とし、これを下回る基本給や賞与などの減額分は旧第20条に反する」という今回の判決は、再雇用前後で仕事の内容が変わりにくい業界や他企業の賃金制度などへ、待遇の見直しを迫るものといえます。

  • ■待遇には合理的な説明を

    2023年02月16日 2020年12月17日

    《非正規雇用の待遇格差、最高裁判決》

    長沢運輸事件などに続き、正社員と非正規雇用者との待遇格差を巡る3件の判決が、10月、最高裁にて出揃いました。

     これらの事件は、非正規雇用である原告が同等の職務内容と思われる正規雇用労働者との待遇格差を不当だとして争っていたもので、現在労働者の4割強が非正規雇用であることや、働き方改革が進みジョブ型雇用など多様な働き方が広まる中、今後の格差是正に向けてどう判断されるかなど、大変注目度の高い裁判でした。

     判断の準拠となっていたのは、労働契約法旧第20条(20年4月よりパートタイム・有期雇用労働法第8条へ移管)「雇用期間に定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」で、職務の内容、職務変更や配置転換、その他の事情が判断要素として挙げられています。

     ポイントは、不合理は禁止されていますが、合理的まで要求されているのではなく、明らかにおかしい、間違っていることが禁止されているというところです。

     日本郵便事件(契約社員)では年末年始勤務手当など5項目が争点となりましたが「手当支給の趣旨は契約社員についても当てはまるもの」であり、待遇の格差は不合理であると判断されました。

     大阪医科薬科大事件(アルバイト)では、賞与と私傷病時の休業補償不支給についてが争点でしたが、業務内容が違うことや、「賞与には正社員の人材確保・定着の目的がある」という経営側の主張が通る形となり、いずれも不合理ではないと判断されました。

     メトロコマース事件(契約社員)では、7つのうち住宅手当など3つが不合理と判断されており、最高裁では退職金の不支給について争われたのですが、会社側の「退職金は長期的な雇用継続のインセンティブ(動機付け)」という主張による不支給は不合理とまではいえないとの結論が示されました。

     しかし、この退職金について「功労金としての役割」が全面に主張されていれば不合理と判断されていた可能性も指摘されており、手当などの趣旨、目的、また対象者が適切であるかなど、合理的な説明ができるかを常に確認しておくことが最重要といえます。