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■待遇には合理的な説明を

《非正規雇用の待遇格差、最高裁判決》

長沢運輸事件などに続き、正社員と非正規雇用者との待遇格差を巡る3件の判決が、10月、最高裁にて出揃いました。

 これらの事件は、非正規雇用である原告が同等の職務内容と思われる正規雇用労働者との待遇格差を不当だとして争っていたもので、現在労働者の4割強が非正規雇用であることや、働き方改革が進みジョブ型雇用など多様な働き方が広まる中、今後の格差是正に向けてどう判断されるかなど、大変注目度の高い裁判でした。

 判断の準拠となっていたのは、労働契約法旧第20条(20年4月よりパートタイム・有期雇用労働法第8条へ移管)「雇用期間に定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」で、職務の内容、職務変更や配置転換、その他の事情が判断要素として挙げられています。

 ポイントは、不合理は禁止されていますが、合理的まで要求されているのではなく、明らかにおかしい、間違っていることが禁止されているというところです。

 日本郵便事件(契約社員)では年末年始勤務手当など5項目が争点となりましたが「手当支給の趣旨は契約社員についても当てはまるもの」であり、待遇の格差は不合理であると判断されました。

 大阪医科薬科大事件(アルバイト)では、賞与と私傷病時の休業補償不支給についてが争点でしたが、業務内容が違うことや、「賞与には正社員の人材確保・定着の目的がある」という経営側の主張が通る形となり、いずれも不合理ではないと判断されました。

 メトロコマース事件(契約社員)では、7つのうち住宅手当など3つが不合理と判断されており、最高裁では退職金の不支給について争われたのですが、会社側の「退職金は長期的な雇用継続のインセンティブ(動機付け)」という主張による不支給は不合理とまではいえないとの結論が示されました。

 しかし、この退職金について「功労金としての役割」が全面に主張されていれば不合理と判断されていた可能性も指摘されており、手当などの趣旨、目的、また対象者が適切であるかなど、合理的な説明ができるかを常に確認しておくことが最重要といえます。