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◆円満な復職を考える

《 復職可否について引用される判例 》

これは、私傷病により休職した従業員が復職するまでの間の賃金と減額された一時金について、最高裁まで争われた事件です。(片山組事件 結審98年4月9日)

 本件の従業員Xは、建設総合業であるY社において、入社以来21年以上にわたり、建設工事現場の現場監督業務に従事していました。

 バセドウ病に罹り通院治療を続けながら現場業に従事していましたが、Y社より次の現場の監督となるよう業務命令が発令された際、Xは次の現場では同様の作業ができないことを伝え診断書を提出したところ、Y社は、Xの健康面や安全面で問題が生じる恐れがあるため業務に従事することは不可能であると判断し、自宅での治療を命じました。

 Xはデスクワーク程度の労働が適切であるとした診断書を再提出し、実際に従事したこともある事務作業への配転を求めましたが、Y社は自宅治療の命令を継続しました。

 約4カ月後、Xの症状は仕事に支障がなくなり現場監督として復職しましたが、他業務なら休職せず勤務を継続できたためこの命令は無効であったとし、復職までの欠勤(無給)扱い期間分の給与と、減額された一時金の支払いを求め争われることとなりました。

 裁判では「従業員が職種や業務内容を特定しないで労働契約を締結した場合は、現に就業を命じられた特定の業務を完全には遂行できないとしても、その従業員の能力、経験、地位、会社の規模、業種、配置・異動の実情や難易等に照らして、その者が配置される可能性がある他の業務を遂行できる現実的可能性が認められ、かつ、本人もそれを申し出ているのであれば、労務の提供があるとするのが相当である。」とし、欠勤扱いはできず賃金の支払い義務はあったと判断されており、その後の、労働者が職種や地域が限定されていない労働契約の場合の、復職可否に関するケースでの判断基準として引用されています。

 近年ではメンタルヘルスの不調なども増加し、従前の業務に復職することが難しいケースも増えており、主治医、本人、会社と双方で情報を共有することをはじめ、配転の可能性や、復職できる健康状態などを就業規則に示しておくことも必要と考えられています。