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事業所外労働の把握

《管理監督者性などを争点とした事案》

 本件は、現場で作業を行う常駐システムエンジニアである元従業員XがY社に対し、労働契約に基づき未払い割増賃金等の支払いなどを求めたもので、Y社もXに対し過払い賃金の返還や不当な賃上げ要求により被った損害賠償金の支払いなどを求め反訴しました。

 主な争点となったのは、Xの管理監督者性、事業場外みなし労働時間制(以下「みなし制」)、固定残業代についてです。

 Xの管理監督者性について、裁判ではXには部下がおらず、労働時間についても基本的に現場の勤務時間に従うこととされ定時で勤務していたことはXが毎月提出していた作業実績報告書からも認められるとし、また、給与額からみても最大40万円であり、厳格な労働時間等の規制をしなくてもその保護に欠けるところはないといえるほど待遇面で優遇措置を講じられていたと評価することはできないとし否定されました。

 みなし制については、Xの勤務場所は当該客先、勤務時間は現場の勤務時間に従うこととされ明確であり、業務内容も一定の定型性を有していることから、Y社において事前にある程度勤務状況や業務内容を把握することができたということができ、Xは常に携帯電話を所持しY社と連絡のつく状態でいるよう指示されており、この指示により別の現場に移動するなどしていたことからも、勤務状況等を具体的に把握することができたといえ、作業実績報告書にも毎日の労働時間について記録していたことからも、Y社においてXの勤務の状況を具体的に把握することが困難であったということはできず、「労働時間を算定し難い時に当たる」とは言えないとしました。

 固定残業代(プロジェクト手当)については、Y社の就業規則により、みなし制の対象者に支給するものとしていますが時間外労働に対する対価である旨の規定はなく、みなし時間が所定労働時間働いたとみなす制度であることからすれば、当該手当は時間外労働に対する対価として支払われるものではないとみるのが自然であり、仮に時間外労働に対する対価としての性質を有するとしても通常の労働時間の賃金に当たる部分との判別はできず該当制を否定し、Y社の訴えを退けました。

※事業場外労働時間みなし労働時間制とは

労働基準法38条の2第1項では、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは所定労働時間労働したものとみなすとしています。