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降格減給の実施権限とその濫用
◆連続減額の合理性◆
これは人事考課により4年連続減給となったことに対し、減給は無効であり、その差額賃金や慰謝料の支払いを求めた事件です。
ネットワークエンジニアとして従事していたXは、11年10月、勤めていた会社がY社に吸収合併されることになり、あらためてY社と正社員として雇用契約を締結しました。
15年度、Y社は従業員に対し、年1回行う行動評価の結果により賃金グレードを決定すること、報酬テーブルとして84の賃金グレードを定めることなどを示した人事・報酬制度ガイドブックを周知しました。この人事考課導入後、Xは減給評価となり、 30万2390円から27万6730円に、以降4年連続ダウン評価となり、4年後には賃金額が21万2090円と当初賃金より約30%の減額となったことで、この評価による賃金の減額は違法であり無効であるとして提訴しました。
裁判では、Y社により定められている規定からも賃金を減額する根拠規定があり、本件評価にあたり考課裁量を逸脱又は濫用したとは認められず、いずれの行動評価についても本件降給基準を充足しており、Y社がXに対して賃金減額を検討して実施する権限があったと認めました。しかしY社の就業規則・給与規定には具体的なグレード毎の賃金の定めがなく、ガイドブックにおいてもグレード毎の定義(役職・職務内容・責任等)は規定されていないことから、権限があり減額され得ることが労働契約上予定されていたと認められるとしても、Y社の権限行使による減額内容等によっては、なお減額幅決定権限の濫用により賃金減額の効力が否定されると解すべきとしました。
そして、本件賃金減額は、通常の労働に対する対価としての賃金を継続的に一定額減給するものとしている上、本件降給基準を充足して賃金グレードが下げられたからといってそれに伴う労働契約上の職責や職務内容の変更も伴わず、1回の減給幅が10%以内であっても繰り返されることで膨らむXの不利益に対する手当等も認められず、Xの不利益の大きさと対比して連続減額の客観性及び合理性の乏しさは否定し難いとし、当初の賃金より10%を超える減額部分を無効としました。
”減給の制裁について(労働基準法第91条 制裁規定の制限)”
就業規則で労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
介護保険制度とは
介護保険とは、高齢化が進むにつれ、介護を必要とする高齢者の増加や核家族化の進行、介護による離職が社会問題となり、こうした中、家族の負担を軽減し介護を社会全体で支えることを目的に、2000年に創設された比較的新しい保険制度です。
40歳を迎えた月より加入し、介護保険料を納めることとなりますが、国民健康保険などの公的医療保険とは異なりいつでも利用できるわけではなく、介護が必要であると認定された場合に初めて利用できるのもこの制度の特徴です。
《介護保険の被保険者》
介護保険の被保険者は、65歳以上の方(第1号被保険者)と、40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)に分けられます。
第1号被保険者は、原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。保険料は一般的には年金からの天引きで支払われますが、公的年金が年間18万円に満たない場合はご自身で手続きをし支払い、「保険料基準額」に「前年の所得に応じて区分けされた係数」(市区町村ごとに区分けや係数は異なる)をかけたものになります。
第2号被保険者は、加齢が原因の疾病のうち、16種類の特定疾病で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。保険料は健康保険や共済組合等の保険料に上乗せされ支払うことになりますが、勤務先との労使折半となるため、加入している健康保険や共済組合によって保険料の計算方法は変わります。
会社の健康保険に加入している方は標準報酬月額、自営業などで国民健康保険に加入している方は前年の所得に応じて保険料が決まります。
《要介護認定とは》
要介護認定は「要支援1~2」「要介護1~5」の7段階に区分されています。
日常生活に必要な動作を自分で行うことができる状態を「要支援」、日常生活に必要な動作が困難な状態を「要介護」とし、「要支援1」から数字が大きくなるほど介護が必要な状態になり、「要介護5」が最も介護が必要な状態となります。