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✔体があってこその労働
《再発防止策込みでの、和解成立》
全国に150店以上展開する24時間営業の外食チェーン店Y社(本社 北海道)の名古屋支店で店長として勤務していたX(当時49歳)は、2015年10月、就業中にくも膜下出血と脳内出血を発症し、右半身不随と言語障害などの重い後遺症が残りました。その後は介護施設に入所しましたが、約1年半後に自ら命を絶ってしまいます。
遺族が労基署に労災を申請したところ、17年4月に適応障害を発症していたこと、発症と業務の因果関係は認められました(18年3月)。しかし、自殺との因果関係は否定されたため労働局へ審査を請求、また、残業や過重な労働が原因であり安全配慮義務を怠っていたとし損害賠償等を求めY社を提訴しました。(18年10月)
当時のXは、直近2ヶ月間で月平均98時間30分の時間外労働と過労死ラインを超える状況で、発症当日も正社員はX1人で他にバイトが7~8人という体制で、深夜勤務も含めた長時間労働が続いていました。
労働局による審査では、後遺症による社会復帰の難しさを苦にした精神障害が原因であるとされ、労基署の判断を取り消し、自殺も含めて労災であると認定されました。
裁判では、当初、Y社は請求棄却を求めていましたが、21年3月30日に遺族との和解が成立し、和解条項に再発防止策も盛り込まれ、さらに、その内容が一部公表されたことから画期的であると関心を集めています。
公表された再発防止策とは、
①21年4月1日付で、全従業員を対象に健康診断受診のための特別有給休暇を創設する
②1時間以上の勤務間インターバル制度の導入を検討し、和解成立から1年以内を目処に必要な規定を就業規則に記載する
というもので、Y社のように常に人員を配置しておかなければならないという営業スタイルであり人員が少ないのであればなおのこと、労務管理として当然考えなければならない措置といえます。
20年ぶりに脳・心臓疾患の労災認定基準が見直される方針も示されています。
労働環境が違えば基準値以下でも疾患の種となり、それを未然に防ぐ仕組みが重要です。
◎労災認定基準、見直しへ
脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会の報告書(案)によると、現状の過労死ラインは維持しつつも「勤務時間の不規則性」を総合的に考慮して業務上外を判断できるよう見直す方針が示されています。
現状でも総合的に判断することとなってはいますが、過労死ラインとされる時間外労働時間が「月80時間」「直近100時間」以下である場合の労災認定率は低く、この時間が認定を左右していることは否めない状況です。
そのため、時間以外の要因を具体的に明記し判断基準として挙げていくことで適切な労災認定につなげていきたいとしています。
今回、勤務時間の不規則性として挙げられているのは、
①拘束時間の長い勤務、
②勤務間インターバルが概ね11時間未満、
③休日のない連続勤務、
➃不規則な勤務、交代制勤務、深夜勤務など
で、過労死ラインとされる基準に達していなくても負担の大きさが認められる場合は達しているケースと同等に認定できるよう、これらの要因も重視する考えです。