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■給与の目安は4割減まで

《再雇用後の減額目安が示される》

 有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることが禁止された労働契約法旧第20条に関する裁判が、名古屋地裁で行われました。(20年10月28日判決)

 訴えたのは、自動車学校にて技能講習や高齢者講習を担当していた職員です。主任として従事していましたが、定年後に再雇用を希望し嘱託職員となりました。

 職務内容や責任の範囲は定年前と変わらなかったのですが、これまで月額16~18万円であった基本給は月額7~8万円と減額されており、旧第20条に反する不合理な待遇差であるとし差額の賃金の支払いを求めていたものです。

 会社側は、基本給は好不況や業績などを総合して決めており正職員との違いは違法ではないと主張しましたが、判決では、「本件での基本給の減額について、年功的性格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される若い正職員の基本給すら下回っており、生活保障の観点からも看過し難い水準に達している」と指摘されています。

 また、再雇用締結の際、賃金に関する労使の合意がなかったこと、嘱託職員への一時金額が正職員への賞与額を大幅に下回ったこと、さらに、教習の時間数に応じた手当などが減額されていることなどからも、以前と同じ業務なのに基本給が定年前の6割を下回ることは不合理な待遇格差であると判断、未払い賃金など約625万円の支払いを命じました。

 今後も裁判が続くかは現時点(20年12月1日)ではわかりませんが、今回の判決はこれまで最高裁で争われた長澤運輸事件など旧第20条に関する裁判の中で、初めて基本給について正社員との格差の是正を企業へ求める判決です。

 再雇用後の基本給を定年前の4~5割程度に設定している企業も少なくありません。業務内容が変わらないのに「基本給を定年時の6割とし、これを下回る基本給や賞与などの減額分は旧第20条に反する」という今回の判決は、再雇用前後で仕事の内容が変わりにくい業界や他企業の賃金制度などへ、待遇の見直しを迫るものといえます。