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契約変更は合意が必要

【転換後に雇用契約終了となった事件】

16年にわたり勤務していた大学(Y)の非常勤講師(X他1名)が、無期雇用に転換したものの、2年ほどで雇用契約終了となったことに対し、労働契約上の地位の確認と未払い賃金を求め争われた事件がありました。

Xは日本語の非常勤講師として、02年よりYと有期雇用契約を締結していましたが、19年4月より無期雇用契約に移行しました。年度ごとに担当コマ数などの変動はありましたが、Yより21年度(次年度)の担当コマ数がゼロとなるため、今年度をもって雇用契約を終了する旨が伝えられたため、解雇の無効と未払い賃金の支払いを求め提訴しました。

Yは、非常勤講師は担当コマ数単位の契約である以上、次年度の担当コマ数がない状況は当該就労形態に内在しており、その場合に契約が終了することは無期雇用という就労形態を選択したXの意思に基づくものだと主張。そのため、次年度に提供可能なコマが全てなくなったのだから労働契約は当然に終了するとしました。

裁判では、本件労働契約は、非常勤講師という就労形態の性質上、担当コマ数の変動、賃金の変動が予定されており、担当コマ数の最終的な決定権限はYにあると認められるものの、一方的に契約を終了することができれば、実質的に雇止めを許容する結果となり、労働契約法第18条の趣旨に反すると指摘。

また、Xは、本件労働契約締結時に無期転換後も担当コマ数の大きな変動はないものと理解していたこと、YがXに対して、担当すべき授業がない場合には当然に契約が終了する旨を説明したなどの事情も見当たらない。このことから当事者の合理的意思としても、次年度に担当すべき授業がないとされた場合に契約関係が終了することを想定していたと解することはできず、Yの主張は認められないとしました。

さらに、Yはコロナ禍による収益の悪化や、授業の改編等を理由に整理解雇の要件も満たしており、これを本件労働契約の終了事由の予備的主張としましたが、雇用を維持すべく努力を尽くしたとは認められず、普通解雇として検討しても合理的な理由を欠くため無効と判断、未払い賃金の支払いを命じました。